「災害時」には「人がどう動くか」で被害も変わる

防災というと、非常食や防災グッズを思い浮かべる人が多いですが、実際には「人がどう動くか」の方が被害を大きく左右します。政府や自治体のデータを見ると、日本人の防災行動にはかなり特徴があります。

 まず有名なのが「帰宅困難者問題」です。東京都の想定では、首都直下地震が発生した場合、東京都内だけで「約453万人」の帰宅困難者が発生するとされています。これは単純に「家が壊れる」だけではなく、電車停止・道路混雑・通信障害などによって“会社や外出先から帰れない人”が大量発生するということです。

1)東京都ではこの問題を重視し、「むやみに帰宅しない」というルールまで整備しています。
▶ 東京都帰宅困難者対策条例

2)次にユニークなのが、「防災意識」と「実際の行動」が一致しない点です。
 内閣府の防災調査では、多くの人が「災害は怖い」と感じている一方で、家具固定や避難確認は意外と進んでいません。特に興味深いのは「家具固定をしていない理由」です。つまり、日本人は「必要性は理解しているが後回しにする」傾向が強いのです。これは防災だけでなく、健康診断や保険などにも近い心理と言えます。

  • 「やろうと思っているが先延ばし」
  • 「面倒だから」

▶ 防災に関する世論調査(内閣府)

3)防災で非常に重要なのが「正常性バイアス」
 これは危険が迫っても、「まだ大丈夫」、「自分だけは平気」、「避難するほどではない」と考えてしまう心理です。実際、大雨や津波でも、避難指示が出ているのに避難しないケースは珍しくありません。災害時に被害が拡大する理由の一つは、情報不足ではなく、“行動の遅れ”とも言われています。

4)また、近年の防災で大きなテーマになっているのが「SNS」です。
東日本大震災や能登半島地震では、SNSが重要な情報源になる一方で、多数のデマも拡散されました。政府も、災害時の誤情報について注意喚起をしています。

<存在しない避難所情報が大量拡散>

  • 不審者情報
  • 偽の募金情報
  • 「〇〇が危険らしい」という未確認情報

▶ 災害時におけるインターネット上の偽・誤情報について(内閣府)

5)SNSの活用と個人の判断力

 海外研究では災害時に最も情報を広げるのは有名人ではなく、「普通の人」だという分析もあります。つまり、防災情報はテレビ局や行政だけでなく、一般人同士のSNSの共有によって広がっているのです。そして、防災時の本当の価値は「モノ」ではなく、差が出るのは情報をキャッチしてからの「判断力」です。防災データを見ていくと、日本の防災の課題は「知識不足」よりも、「分かっていても動けないこと」にあるのが非常に面白い点です。中学校~大学まで英語をあれだけ勉強したのに、英語を使えない日本人が多いのに似ている現象です。普段から「イザ」の時に使える防災準備をしていきましょう!

  • どの情報を信じるか
  • いつ避難するか
  • 家族とどう連絡するか
  • 外出先でどう動くか
  • デマを見抜けるか

防災時の情報収集の方法は決まっていますか?

災害時は「どこで何が起きているか」「どこから情報収集するか」「家族は無事か」などの情報を、自治体や地域、各種メディアから信用できる情報を落ち着いて適切に収集して判断しましょう。SNSの情報は速いですが根拠がない情報まで発信されています。